「自炊している本をどうしているか教えたい」 深沢千尋 第1回 デジタル読書ってこんなに楽しい! ライトニングトーク大会

2017年11月19日日曜日

 2017年9月30日(土)、NPO法人日本独立作家同盟主催で様々な視点からデジタル読書の楽しみ方を紹介するライトニング・トーク大会を行いました。

 10人が登壇したのですが、その内容をひとりづつ、テキストで紹介していきます。 九番目の登壇者 深沢千尋さんのライトニング・トークです。



 みなさんこんにちは。深沢千尋ふかざわちひろと申します。今日は「自炊じすい ※1 している本をどうしているか教えたい」というテーマで話そうと思います。

 自己紹介。深沢千尋、ということで、Twitter のアカウント @query1000 Facebook Chihiro.Fukazawa ブログ「イジハピ」など、見て下さい。著書として『すぐわかるPerl』というのがあるんですけれど、この本は内容が古いので、このあとで紹介する『かんたんPerl』というのを読んでください。で……すみません宣伝ばっかりで、『文字コード超研究』、達人出版会から出てるんですがなんか PDF に DRM がついてなくてびっくりしてます。『すぐわかる オブジェクト指向 Perl』これはすごく良い本なんですがまだ(電子書籍は)出ていないのでこのあとの話を参考にして自炊して下さい。(会場笑)

 それで『かんたんPerl』という本が出たんですけれど、前にも話しがありましたけど、技術評論社ダイレクトで絶対電子書籍を買って下さい。DRM がついてない PDF と DRM がついてない EPUB がセットでついてくる、しかも紙の本よりも安い、ということで。技術評論社がこんなに良い会社だとは僕は知らなかったですね。

 あと最近 KDP で小説に手を染めまして、小説を書きました。Kindleキンドル ※2koboコボ ※3book☆walkerブックウォーカー ※4Appleアップル iBooksアイブックス ※5 で売ってるんですが、Kindle しか売れてないですねー。99円ということなんで、内藤さんのお子さんもなんとか99円お小遣いから出して買ってほしいんですけれども。


 今日のテーマは自炊ということで、自炊についていろいろな話をしていこうとおもいます。主に自炊をしたことがない方に緩い話しをおとどけしようとおもいます。「自炊する前の僕は貧弱な坊やだった」ということで、(会場笑)

  • 部屋がぐちゃぐちゃで
  • マンガの次の号が見つからなくて
  • 本棚がたわんで、つぶれて
  • 部屋が狭くて結局捨ててしまって
  • もうやってられるかー!!!

 ということになったんですけれども、自炊となるとためらいがちょっとあったんですね。

  • 本当に断裁とかスキャンとか出来るのか?
  • 自炊した本なんか本当に読むのだろうか?
  • 読みたい本がすぐ見つかるか?
  • 本棚がなくなることへの寂しさに耐えられるか?

 ということでいろいろ逡巡があったんです。いろいろ日和ってたんですけれど日和りのナンバーワンとして安物の非破壊スキャナーというところで特に名前は出しませんがソナーサプライというところで買ったんですけれども。

  • 断裁が怖くて買ってしまったんですが
  • 手動で、1冊やるのに小一時間もかかってしまう
  • 自分の指の実写版が入ってしまう(会場笑)

 サンダーバード ※6 みたいな、あるいは『巨人の星』のクリスマスカード書くところ ※7 みたいな状態になってしまってすごい怖い。で、結局すぐ使うのをやめました。

 日和りのナンバーツーに自炊代行業者さんに頼んだんですけれど

  • 業者さんって大人気でなかなか戻ってこない
  • 帰ってくるまでその本が読めない
  • 自分で自炊できる今なら言えるんだけれど
  • 値段が高すぎるし
  • 時間がかかりすぎる!

 からやっぱりこれは使わないほうが良いということで。さらに日和りのナンバースリーということでスキャナーレンタルですね。

  • レンタルで8泊9日5千円というのを買いましたが
  • スキャナーは定番の Scanスキャン Snapスナップ ※8 を貸してくれたんですけれども
  • 断裁機が超大型の17kgあるやつを送ってきたんですけども
  • これで「自炊が出来る」と。「俺は自炊が出来る男なんだ」ということがこの時点で分かりました
  • 根性があれば8泊で家中の本をスキャンできるのではないか(会場笑)とおもうんですけれど
  • 今考えれば私にとって不要な体験だったんですけど、背中を押してくれて非常に感謝しております

 ついに本格的に自炊に乗り出す、ということで。

  • 断裁機は DuroDexデューロデックス200DX ※9 ということで
  • 定番ですね
  • 軽くて
  • 立てておけて
  • 刃を替えるのはちょっと面倒なんですけれど

 これを使用します。

  • スキャナーはちょっと高級な Canonキャノン DR-C240 ※10 を買ってみましたが
  • シートフィーダー大容量で
  • スキャンが早くて
  • プログラムを本体側で変更可能

 これがね、結構まめなんですよ。普通はパソコンとスキャナーを行ったり来たりしなきゃいけないんですけれどここに(スキャナーの)ここにボタンがついててこれで白黒、とか、これでグレー、とか、これで白黒、とか……何回も同じこと言ってますけど、これでカラー、とか。私は奇数番に白黒を割り当てて、偶数番にカラーを割り当ててます。これで大変作業が早くなりますね。あと受光部がカバーされていないのがダサいかなとおもいます。

 スキャンの手順としてはですね、

  • 断裁して
  • 表紙はカッターで切って
  • スキャンして
  • 表紙はカラーで
  • 中身は白黒で
  • スキャンは付属ソフトで十分で
  • 終わったら Acrobatアクロバット ※11 で編集
  • ページ合わせはやった方が良いです

 表紙と中身は合わせたほうが良いですね。ここで凝る人は凝りますけど私は凝りません。で、(読書する)環境としてはですね、


  • PDF ※12 で保存して
  • Dropbox ※13 に入れて
  • iPad mini に入れて
  • Comicコミック Glassグラス  ※14 で読んでます

 自炊なんかして読みますか? ということなんですが、長編の本をすごい一杯入れています。

 技術書。この話をしたかったんですが……(持ち時間が迫ってきた)「技術書は立てて読め」ということでですね、「プログラミングは写経 ※15 をすると力がつく」と言われているんですけれど、手前に本を広げて読む(読みながらキーボードでプログラムコードを打ち込む)のは大変です。みなさん今までこんなことやらせてスミマセンでした。

 実際には電子書籍とプログラミング環境(を表示したモニター)を立てて並べて読めるんで、技術書は、絶対に、ゼッタイに、立てて(演習を)やった方が良いです。

 で、『天才伝説 横山やすし』 ※16 という本を文庫本と単行本版で文章が微妙に変わってて(自炊して読み比べて)楽しかった……という話をここでしたかったんですけども(持ち時間終了のタイマーが鳴る)またそのうち話したいと思います。

 で、「自炊本 vs. オフィシャル電子書籍」ということですが個人の意見としては自炊の方に一日の長があるとおもいます。ですが(どちらも)切磋琢磨していこうとおもいます。

「ぼくは紙の本の味わいが好きだなぁ!」といろんなひとに言われるんですけど、確かにその通りだと思います! ただですね、100冊ぐらいしか本を読んでいない人にとやかく言われたくありません! (会場爆笑、拍手)ご静聴ありがとうございました!




※1 自炊じすい …… ここでは自分が所有している書籍や雑誌をスキャナーなどで読み込んでデータ形式にすることを指す俗語としてこの言葉を使っている。「自分が持っている本のデータを吸い込む」ことから「じすい」と呼ぶようになったとされる。
※2 Kindleキンドル …… アマゾンが製造・販売する電子ブックリーダー専用端末及びスマートフォン・タブレット・デスクトップ向けの電子ブックリーダーアプリケーション、及び電子書籍関連サービス
※3 koboコボ …… 電子ブックリーダー専用端末及びスマートフォン・タブレット・デスクトップ向けの電子ブックリーダーアプリケーションを販売するカナダの企業、及びその製品名。企業は2012年に楽天の子会社になっている。
※4 BOOK☆WALKERブックウォーカー …… カドカワグループのデジタルコンテンツ事業運営会社ブックウォーカー社が運営するオンライン書店サービス、及びスマートフォン・タブレット・デスクトップ向けの電子ブックリーダーアプリケーション
※5 iBooksアイブックス …… アップル社が販売する電子ブックリーダーアプリケーション、及び電子ブックストア。
※6 サンダーバード …… 1965〜1966年にイギリスで製作された人形劇による特撮テレビ番組。手元のシーンだけ実写を使っている場合があった。
※7 アニメ番組の『巨人の星』でも、手元のシーンが実写映像だった回があるとのこと。なお「クリスマス」については野球関係以外友達がいないことからロボットのようだ、と指摘されたことに深く傷ついた主人公星飛雄馬がクリスマス・パーティを企画し招待状を出すが誰も来なかったため更に傷つく……という回があった。
※8 Scanスキャン Snapスナップ …… 富士通製のカラーイメージスキャナー。個人向け商品ラインナップもありよく使われるスキャナー。
※9 DuroDexデューロデックス200DX …… 株式会社デューロデックス製の個人向け断裁機。いわゆる押し切りだが、書籍や雑誌の綴じ部分を断裁することに特化してつくられており、トーク内でも「定番」と言われているように評価が高い製品。
※10 Canonキャノン DR-C240 …… キャノン製のドキュメントスキャナー。法人で使うことも想定した比較的高性能な製品。
※11 Acrobatアクロバット …… アドビシステムズ社が開発する Portable Document Format (PDF) を作成・編集・加工・閲覧するためのソフトウエア。スキャンしたデータをまとめたりするのに使用する。
※12 PDFピーディーエフ …… アドビシステムズ社が開発、提唱する電子文書のファイルフォーマット。特定の環境に左右されずほぼ同じ状態で文書を閲覧できる。そのためインターネット上で公開する公式文書などによく用いられる。本のスキャンデータも様々な端末で読むことができるため保存形式に用いている。
※13 DropBoxドロップボックス …… アメリカ DropBox, Inc. が開発、提供しているオンラインストレージサービス。複数の異なる環境のパソコン、タブレット、スマートフォンから同じデータを見ることができる。
※14 Comicコミック Glassグラス …… Arinkosoft が開発する、スキャンした漫画や雑誌を iPhone、iPod Touch、iPad で読むためのソフトウェア。
※15 ここではコンピューター・プログラミングの習得において、お手本となるソースコードを真似して自分で打ち込むことを指す俗語。
※16 『天才伝説 横山やすし』 …… 小林信彦著の評伝。文藝春秋社から単行本及び文春文庫がそれぞれ刊行されているがおそらく現在店頭には並んでおらず、古本屋か図書館を使わないと読み比べはできないものとおもわれる。

登壇者 深沢千尋(ふかざわ ちひろ)
フリーライター。著書に技術書として『かんたんPerl』、『すぐわかる オブジェクト指向 Perl』、『文字コード超研究』、小説に『イッシュ ―図書館の女―』など。